switch9’s blog

地球のみなさん、こんにちは

実験的企画「本日の1曲」終了のお知らせ

 「本日の1曲」は昨日のエントリーをもって終了しました。正体不明の企画を日々読んでくださった皆様、ありがとうございました。

 この企画は、ネット上に氾濫するYouTuberの一人語りや、同じくネットに広く存在する、テレビ・ラジオ・インタビューなどの書き起こしに対して受け手が持つ、根拠のない信憑性と信頼感を、虚構の人物に現実の出来事や音楽について語らせることで、文章に付与できるのではないかという考えからスタートしました(その事は隠していましたが)。全26本の「本日の1曲」に書かれていることはは私の意見でありかつ私の意見ではありません。内容の8割は真実であり、2割は虚構です。もしくは、2割は真実であり、8割は虚構です。それは9:1かもしれないし、6:4かもしれません。

 この約1ヶ月間、虚構の人物に現実を語らせているうちに、虚構が現実を取り入れ、また現実である私が虚構を受け入れ、それが虚構なのかあるいは現実なのか、虚構が語っていることは事実なのか、あるいは事実のふりをした作り話なのか。そのせめぎ合いを経験できたことは非常に有益であり、貴重な経験でした。

 最初は、虚構に語らせることで逆説的に現実感や信憑性を文章に付帯させることを狙っていたはずなのに、いつの頃からか、現実である私が書く文章が、虚構であることの制約にとらわれはじめ、書きたいことがあったとしても、私自身の考えが前面に出てしまうことをあえて抑えねばならず、徐々に出来上がっていく虚構の語り手の自我を尊重した形での文体に従わなくてはならなくなっていくことの怖さが芽生え始め、それでいて私が書いている文章であることの主張は維持しなくてはならない、その難しさを知りました。はっきり言って、こんな大変なことをなんの報酬もなく、たんなる趣味で、たった1ヶ月弱ではありますが、やってみて得たげっそり感。それが脳みそと体の芯に染み付いている今は、自分の意見を自由に(至極当然なことなのだけれど)書けるこれから先はなんて気楽なんだ、やりたい放題できるぞ馬鹿野郎という気持ちで明日からの未来が輝いて見えています。美爽煌茶のCMのおばはんがいう「すっきり」、あるいは孫悟空が道着と靴を脱いだあとの「軽くなった」が今の私には自分のこととしてありありと十二分に理解できます。

 明日からのこのブログは、普通の文体で、私自身が言いたいことを、自由に書きます。虚構の語り手は今ここに消滅しました。

イントロのいい曲、という話 (モンキーマジック / ゴダイゴ)

 本日の1曲は、ゴダイゴのモンキーマジックです。

 

 今日は11月26日で「いい風呂の日」ということでですね、昨日お風呂の話したばっかりなのに、だったら今日にしたらよかったなあって気もしますけどもまあしゃーないですね。お風呂の日ってことで、なんかテレビで見ましたけど、動物園のカピバラも特別に露天風呂作ってもらったりして。気持ちよさそうにお風呂入ってましたけど。長野のお猿さんの温泉とかもそうですけど、どうぶつもやっぱりお風呂はいると気持ちいいんですかね。

 

 風呂の話は昨日やったんで、いや、まあ、昨日の話はトイレの話ですけど。どっちでも同じか。まあ、そんなことなんで、今日は風呂じゃなくて、動物の話をしますけど、動物つながりでなんか、動物に関係ある音楽っていうと、うーん、色々考えたんですけど、最近聞き直してみてやっぱりすげーなって思ったのが、ゴダイゴのモンキーマジックの、特にイントロ。あのイントロかっこいいんですよね。わかります? かっこいいイントロの曲ベスト50を選ぶとしたら絶対入るだろうなっていう。他は何が入るだろうな。Aphex TwinのFlimとかもいいですよね。柔らかい音がすーっと入ってきてその瞬間に周りの空気を変える力があるっていうか。あとはベタですけど、ツェッペリンの移民の歌とかも。ホワイトノイズから始まってギターのリフが始まった途端に場を支配できる、やっぱり力がある。リマスター版は最初のノイズのとこバッサリ切っちゃってて。何すんだおいって思っちゃうんですけど。

 まあ、それはともかく、モンキーマジックのイントロは、やっぱり、この、シンセで別世界作り上げてるとこですよね。すごい。サイケデリックで、アナログシンセの良いとこ全部引き出してる。いいイントロ。いい仕事してますよ、ホント。フリーキーなんだけどそれだけじゃなくて、ちゃんとコントロールできてて、実はシンセの技術的なこととか音楽のこと分かってないとできない、なんていうかスキルの高さがびんびん伝わってくるでしょ。で、そっからだんだん盛り上げていって、アチョーって。そっからシンセにかぶせてタイトなドラムとベースが入って、もう、ファンキーなんですよね。シンプルな振りしてすごい高度なことやってるっていう。真似しようとしても出来ないし、今再現しようとしてもあのグルーヴ感、出せないんですよねえ。

 


godiego - the birth of the odyssey / monkey magic

 

ゴールデン☆ベスト ゴダイゴ

ゴールデン☆ベスト ゴダイゴ

 

 

アイデアの神様はどこにいる、という話 (トイレの神様 / 植村花菜)

 本日の1曲は、植村花菜トイレの神様です。

 

 「さあ原稿を書こう」と思ってですね、パソコンに向かっても全然、なんにもアイデアが思い浮かばないっていう時があるんですね。あるんですね、とか言うとたまにしかないみたいな言い方ですけど、まあ、その、ほぼ毎日そうです。

 で、うーんって唸って悩んで考えて、それでなにかしら思いつくときは良いんですけど、頭空っぽでなーんにも思いつかなかったり、考えがまとまんないときは、そのままパソコンの画面眺めてるより、ちょっと他のことしたほうが、ふと、考えが下りてくるってこと、みなさんも経験あると思うんですよ。コーヒー淹れたりとか散歩したりとか。

 私の場合はですね、まあ、これは夜に限った話ですけど、シャワーを浴びて、湯船でぼーっとしてるとなんか、頭のなかでおんなじとこグルグル回ってた考えに、ふっと、外からなんか思ってもみなかったことが割り込んできて、あっちこっちかき回して化学反応起こすみたいなことよくあるんですね。考えに煮詰まったら風呂。ですね、私の場合。

 

 どんな時アイデア思いつくかって、一般的に、っていうか、昔からよく言われるのは、アイデアが浮かびやすいシチュエーションの「さんじょう」って言葉があって、これ、三つの上って書くんですけど、あんじょう(鞍上)、ちんじょう(枕上)、しじょう(厠上)っつって、あんじょうっていうのは鞍の上のことで馬に乗ってる時、今だったらクルマ運転してるときとか、電車乗ってるときとかもそうかもしれないですけど、で、ちんじょうは枕の上、つまり布団に入ったあと、寝てしまいそうなギリギリのときって、なんか脳の制御が曖昧になるっていうか、普段繋がらないようなシナプスが繋がってわけのわからないアイデア思い浮かぶ時ありますよね。で、最後のしじょうっていうのは、「し」っていうのは厠のことで、つまりトイレでキバッてるときにインスピレーションがおりてくるんだって、昔も今もおんなじだなあって思いますね。

 

 「トイレの神様」は鞍上、枕上、厠上どこで思いついたんだろうなあって、やっぱり厠上かなって。大きなお世話ですね、すみません。

 


トイレの神様/植村花菜

 

 

知名度と先入観だけで判断しちゃだめだよ、という話 (Who Is It / Bogdan Raczynski & Bjork)

 今日の1曲は、Bogdan Raczynski & BjorkでWho Is Itです。

 

 みなさん、ユニクロの服って着ますか? 最近はそうでもないのかもしれないんですけど、ユニクロっていうと、悪くはないけど値段相応っていうイメージを持つ人が多いと思うんですね。今だとG.U.のほうがそういうイメージ戦略なのかな。いずれにせよユニクロとかG.U.にクオリティを求める人はあんまりいないんじゃないかなあ。どうですか。

 

 あの、私、時々、レコードをディグりにリサイクルショップに行くことがあってですね、リサイクルショップのレコードコーナーって1枚50円とか100円で思わぬレコードに出会えるんで面白いんですね。まあ、ほとんどが、ぱっとしない80年台のアイドルか浪曲かクラシックですけど。

 で、ついでに古着コーナーも覗いてみてるんですね。ぶらぶら見ながら、なんとなく触った感じとか見た目とかで、ピンときたのを直感で手に取ってみたら、結構な確率でユニクロを引き当てるんですね。それが、ちょっと名の通ったファッションブランドよりも、むしろユニクロのほうが使ってる生地のクオリティも高いし、縫製とかもすごいちゃんとしてるんですよ。とくにネルシャツとかスウェットの生地はすごいちゃんとしてる。ビンテージのオーラとかセクシーさはないけども、オーソドックスな品質のレベルが高い。しかも、シルエットとかディテールも野暮ったさがなくて、服としてすごくちゃんとしてる。

 

 みんな、どうしても、ユニクロっていうブランドイメージの先入観に囚われちゃってて、タグを見てしまったりすると、服そのもののクオリティを公平に判断できてないんだと思うですけど、これって普段の生活の中にもよくあることっていうか、ついついやっちゃうことなんですよね。ネームバリューだけで判断しちゃいけない、ちゃんと中身を見て、判断しないといけないなあって、リサイクルショップの二束三文の古着見ながら、音楽でも、もっと評価されてもいいミュージシャンっているよなあとか考えたりしてました。たとえば、Bogdan Raczynskiとか。

 


Bogdan Raczynski & Bjork - Who Is It

 

 

サンプリングミュージックと人体の構造、という話 (Mt. Saint Michel Mix+St. Michaels Mount / Aphex Twin)

 本日の1曲は、Aphex TwinのMt. Saint Michel Mix+St. Michaels Mountです。

 

 「読者には誤読の自由がある」とは筒井康隆先生のありがたいお言葉ですが、視聴者にも誤解の自由があると信じてあえて今日はAphex Twinです。

 

 サンプリングミュージックについて、ごく大雑把に言うとですね、80年台にサンプリングミュージックというものが誕生して、そこから90年台に入って、ブレイクビーツと言われる音楽ジャンルが出来上がっていって、どんどん進化していく過程で、当時注目されてたのは、スピードと打ち込みの密度だったと思うんですよ。BPMもどんどん速くなっていって、さらに32分音符とか64分音符とかの細かさでリズムを刻むようになっていって、そういう、人間のドラマーには到底演奏できないようなリズムこそがブレイクビーツというジャンルの音楽の魅力だって、あの頃のリスナーは考えてたと思うんですよ。僕も含めて。

 

 それってたしかにそうなんですけど、実はもう一つあるんじゃないかなあって。というのがですね、Chris Cunninghamが監督したMonkey Drummerっていうショートフィルム、っていうかミュージックビデオですね。今日の1曲のAphex TwinのMt. Saint Michel Mix+St. Michaels Mountをフィーチャーしたミュージックビデオなんですけど。知らない人のために簡単に説明しとくとですね、6本の腕と2本の足とチ○コでドラムを叩くチンパジーのロボットがドラムを演奏するビデオ、ってこの説明で理解できる人いないですね、頭おかしいですね、Chris Cunningham。これをあらためて見てみて、なんでこのビデオ撮ったんだろうって疑問に思ったんですよ。腕が6本あることに何か意味があるんじゃないかって。

 

 で、ふと気がついて。人間のドラマーを凌駕したブレイクビーツの魅力って、スピードとか手数だけじゃなくって、同時に鳴らせる音の数でもあったんじゃないかなあって思うんですね。サンプラーシーケンサーがあれば、人体の構造に制約されることのない音を鳴らせる、そのことの革命性ですね。このビデオの中でドラムを叩きまくってる6本腕のチンパンジー型ロボットってまさに、それを具現化した、ブレイクビーツの象徴としてChris Cunninghamは描いてるんじゃないかなあって。サンプラーを手に入れたミュージシャンはつまり、腕が6本あるドラマーのようなもの。そういう人たちが作ったのがあの頃のブレイクビーツという音楽だったなじゃないかなあと。あくまでも個人的な解釈ですけど。あながち間違っちゃいないと思うだけどなあ。まあ誤読は読者の権利だということで。

 


Aphex Twin & Chris Cunningham Monkey Drummer Music Video [HQ - 1080p]

 

Drukqs

Drukqs

 

 

ミームの汚染とロッキー・バルボアと、という話 (Burning Heart / Survivor)

 本日の1曲は、SurvivorでBurning Heartです。

 先日、テレビでロッキー4見たんですよ、たまたまやってて。夜中のBSだったかな。もう何回見たかわかんないぐらい何度も見てる映画なんですけど、今でもテレビでやってるとつい見ちゃうんですね。

 ロッキー・バルボアとイワン・ドラゴ、アメリカ対ソ連、冷戦の構造そのままの、まさに80年台って感じの映画なんですけども。今日のこの曲はもう有名で、ロッキーと言えば、テテーテーンのあのテーマソングと、これと、あと、おんなじロッキー4のEye Of The Tigerじゃないかと思うんですね。誰でも聞けば「ああ、ロッキーの!」ってなる曲で。

 

 でも、今、この曲聞くとたしかにロッキーのことを思い出すんですけど、それより先にイッテQのこと思い出しちゃうんですよね。お祭り男の大会前日の音楽だ、って。これってすごいことだなあって。あのロッキーの強大なイメージを上書きできちゃってるんですよ、いつのまにか。

 難しい言葉で言うとミームの汚染ってやつですか。汚染っていうのもあんまりきれいな言葉じゃないんで、書き換えって言ったほうが良いのかな。正しい表現かどうかは分かんないですけど。いずれにせよ、この曲が思い出させる記憶がもはや、ロッキーが雪の中走ったり、薪割ったり、大八車持ち上げたり、岩引っ張り上げたりしながらトレーニングしてるシーンじゃなくて、日曜夜8時のバラエティ番組の1コーナーのインタビューシーンになってるっていうのは、すごいっていうか、面白い現象だなあって思うんですよね。

 

 ちなみに今日のこの話に「ちげーよ、ロッキーがトレーニングしてるシーンはJohn CaffertyのHearts On Fireだろ。テキトーなこと言ってんじゃねえよ」って、突っ込んだみなさんはですね、まだまだロッキーファンとして大丈夫だと思います。

 


Survivor - Burning Heart

 

 

頑丈な段ボール箱、という話 (Panama / Boxcutter)

 本日の1曲は、BoxcutterのPanamaです。

 

 段ボール箱をですね、結構大量な数なんですけども、開いて畳む機会がありまして、おっきいのもちっさいのもいろいろで、一個一個、ガムテープで止めてる部分剥がしながら畳んでたんですね。何言ってんだお前、なんの話だよってお思いでしょうけども。

 

 で、慣れてくるとだんだん単純作業になってきてスピードも上がって効率よく潰していけるようになってくるんですけども、たまにですね、頑丈な段ボール箱があるわけですよ。

 普段、段ボール箱の業者でもない限り、ダンボールのことを深く考えることも無いと思いますが、頑丈な段ボール箱っていうのはですね、ほれぼれするほど頑丈なんですね。「頑丈だなあ」って。しみじみしちゃうぐらいすごいんですよ、そういうしっかりした箱がたまにあって。そういう箱は壊すの大変なですけど、それよりか、なんか壊すのもったいないっていうか、頑丈な箱の魅力に気づいて、壊さずに置いとこうかなとか、こんだけ頑丈なら何入れようかとか考えたりして。

 

 山に登るはそこに山があるからだとか言った登山家がいましたけど、段ボール箱に物を入れるのはそこに段ボール箱があるからだ、って思わず言いたくなるような、そういう箱こそが、いい段ボール箱の条件なんじゃないかなあと思いながら、横によけて、結局潰さずに、その箱2つだけまだそのままにしてて。さあ、あなたなら段ボール箱に何を入れますか。なんかね、そんなこと言いたくなるような。

 

 結局最後まで、なんの話だよってお思いでしょうけど。箱、いいですよね、箱。頑丈な段ボール箱。ほんと、すみません。

 


Boxcutter - Panama