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switch9’s blog

地球のみなさん、こんにちは

創作することは苦しいことだ。でも、その先に誰も知らない未来がある。という話 (Love Will Tear Us Apart / Squarepusher)

本日の1曲

 本日の1曲は、スクエアプッシャーのLove Will Tear Us Apartです。

 この曲は、もともとはジョイ・ディヴィジョンというロックグループの曲で、それをスクエアプッシャーがカバーしてるんですが、スクエアプッシャーさんていうのは、もとは、当時人気のあったテクノとかブレイクビーツのミュージシャンで、90年台の半ばに10代後半ぐらいでデビューして、才能の塊みたいな人なので、新しい音楽に敏感な人達の間で、「なんかすごい新人出てきたらしいよ」って噂になって、あっというまにブレイクビーツといえばスクエアプッシャー、みたいな事になっていって、いくつものレコードレーベル同士のの争奪戦になった結果、ワープレコードっていうレコードレーベルと契約するんですね。

 それから1年半ほどの間に3枚ほど立て続けにアルバムをリリースして、―これってすごいハイペースなんですけども―ブレイクビーツっていう音楽ジャンルをある意味で、もはや極めてしまうんです。本人も当時のインタビューで「機材の使い方もアイデアもやれることは全部やってやり尽くしてやったよ」みたいなことを言ってて、実際このジャンルを大きく進化させたんですけど、そしてすべてやりつくしちゃって、その次のアルバムで、全然違うスタイルの音楽を突然発表するんですね。これがリスナー的には期待とぜんぜん違うものでてきちゃったもんで、当時の評価は真っ二つ、というか真っ二つならまだ良かったんですけど、なんか違うんだよなあみたいなことになって。今聴いてみるとこれはこれですごくいいんですけど、ファンの中にすっかり出来上がっていたスクエアプッシャー像みたいなものと本人が描く理想像のギャップがあまりにもかけ離れてて、聴く方としては全然理解が追いつかなかったんですね。

 

 本人としては自信のある作品を出しても世間の評価がついてこなくて、そのアルバム出したあとスクエアプッシャーはちょっとの間、音楽活動を休止して、休止してたのかどうかはよくわからないんですけど、レーベルの関係者も連絡取れなくなってたみたいで、プチ失踪っていうのかな、そんな感じで、その後また2枚ほどアルバム出すんですけど、また違うスタイルの音楽で、あんまりにもスタイルがどんどん変わるもんで、ファンも評論家もスピードに追いつけなくなって。それでも「我関せず」みたいな図太い神経なら良かったんでしょうけど、スクエアプッシャーさんはその辺ちょっとナイーブな人なので、多分自分の中でも、「何がいい音楽なのか」みたいなちょっと迷った時期があったんだと思うんです。で、それまでテクノとか電子音楽とか、難解なジャズとかやってたのに、このDo You Know Squarepusherっていうアルバムの、まあ、このアルバムのタイトルも相当ひねくれちゃってるというかスネてるというか、自信喪失とまでは言わないですけど、そのアルバムの最後の曲にこのLove Will Tear Us Apartを収録したんですね。その意図は本人に聞かないと分かんないですけど、聞いたところで正直に言うような人でもないか。まあ、それはいいとして、やっぱり相当悩んでたんだと思うんですよね。自分に音楽の才能があることは確かで、作る音楽はすごく新しくて完成度も高いんだけど、世の中から評価されなくて、「なんなの? こういう音楽演れば聴いてくれるの?」みたいな心情の吐露なのかもしれないですけど、天才でもやっぱり迷ったり苦しんだりするですよね。スクエアプッシャーぐらいの才能の持ち主でも。

 

 で、実際のところ、このアルバムが評価されたかっていうと、当時の評判はあんまり良くなくて。ファンにしてみたら「どうしちゃったんだろうなあスクエアプッシャー」みたいな雰囲気があって。それでもスクエアプッシャーは創作し続けた。で、このアルバムの次に出したアルバムが、まるで霧が晴れたみたいというか、抱えてた悩みがすべて吹っ切れたみたいな、素晴らしい作品で、ファンからも評論家からも大絶賛されたんですね。

 でも、そのアルバムに収められた音楽はまるで新しいものじゃなくて、あの評価されなかった時代の音楽への探求があったからできた音の集積だったんですよ。そこを経た人じゃないとたどり着けない悟りの境地みたいな。つまり、アーティストっていうのは、ファンが求めるものを作って同じ場所をグルグル回ってるだけじゃなくて、たとえその時に評価されなくても新しいことを常に求めて続けて、その過程の苦しさみたいなのを経て、名作、名盤を後世に残していく大変な仕事だっていうのが、よく分かる。そうやって結果を出すと、批評家っていうのは急に手のひらを返したみたいに、その経過まで褒め始めるんですけど、まあ、これは我々凡才が、天才の考えてた壮大なプランをを遅ればせながらやっと理解できたっていうことなんですけども。

 

 まあ、創作活動をやってる人には、誰にでもそういう苦しい時代はあるものなので。「俺って才能ないなあ」とか、今、悩んで苦しんでる人も、自分が「正しい」、「やりたい」と思ったことがあるんなら、傍から何を言われようとも前に進んでください。きっと答えは出ますから。

 


Squarepusher - Love Will Tear Us Apart (Joy Division) HD

 

Do You Know Squarepusher (2CD)

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