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switch9’s blog

地球のみなさん、こんにちは

密度を高めるだけが進化ではない、という話 (For Everyone Under the Sun / Jimmy Smith)

 本日の1曲は、Jimmy SmithのFor Everyone Under the Sunです。

 

 秋といえば読書の秋ということで、最近寒くなってきてもはや読書の冬になりつつありますけども、私も最近、読書の秋でして、時間があるときは本屋さん行って、で、行くとつい何冊か買ってしまうんで、部屋には読んでない本がだんだん積み上がってきちゃって。読まにゃいかんなあと。

 

 最近読んだのがですね、遠藤周作の「海と毒薬」で。これって、太平洋戦争当時の話で、医者とはどうあるべきか、人間と生と死とは、みたいな結構重い内容なんですけど、意外とあっさりと書かれてて、終わり方も「あ、そこで終わるんだ」みたいな、あっさりとした終わり方で。

 たとえばこれが現代の小説だったら、もっと事細かに下手したら文庫本全4巻ぐらいの量で、登場人物全員の心理描写から人生の最後まで描きかねないんですよね。ボリュームも内容ももっと詰め込んじゃうんじゃないかなあって。

 これって、小説だけに限った話じゃなくて、映画とか漫画とか音楽とか、創作物全般がそういう傾向にあって、なるべく密度を高めて、アイデアも詰め込みまくって、情報量を可能な限り増やして、漫画とかだったら長く連載続けて、って言う風に、昔とは求められるボリュームもクオリティも格段に高くなってしまってるんですよね。

 

 もちろん、そういう今の作品にも面白いものはたくさんあるし、それは進化の仕方として間違っちゃいないんだけど、じゃあ、海と毒薬を今読んでみてツマんないか、古臭いかって言うとそうはなってなくて、これはこれで作品としてちゃんと成立してるし、読み終わったあとに心に残るものもちゃんとあるし。どっちがどうとかは無いんですよね。詰め込みすぎてないことが受け手に与える余韻の良さっていうかな。

 今の時代にこんな昭和の中頃のような密度の作品を発表して世間に受け入れられるか、群雄割拠の、ものすごい数の小説とか漫画がある中で見出して評価してもらえるかっていうと、なかなか難しいとは思うんですけど、みんながみんなおんなじように進化してくと、生物の進化も同じですけど、画一化しちゃうと、ひとつの同じ原因で絶滅しちゃうんですよね。たまたま違う進化を遂げた種だけが、隕石落下とか疫病のあとも生き延びれたみたいな。

 そういうこともあるんで、詰め込みまくって情報量パンパンの作品だけが名作じゃないよって、ふと振り返ってみるのも、いいんではないかと。本日の1曲のFor Everyone Under the Sunも、今の音楽からすればスカスカですし、ほぼずっと同じコード進行ですけど、オルガンの魅力をちゃんと引き出してて、これはこれで揺るぎない名曲ですので。どっちに進めばいいのか迷ったときは、ふと過去に目を遣るのもいかがでしょうか。

 


For Everyone Under the Sun - Jimmy Smith - Root Down

海と毒薬 (角川文庫)

海と毒薬 (角川文庫)