「いい意味で」、という話 (Buttermilk Biscuits (Keep On Square Dancin') / Sir Mix-A-Lot)
本日の1曲は、Sir Mix-A-LotのButtermilk Biscuits (Keep On Square Dancin')です。
普段の会話の中でですね、便利な言葉がひとつありまして、それは何かというと、「いい意味で」って最初に言っとくと、その後何言っても悪口にならないっていうか、相手は怒れなくなるっていうことを発見したんですね。
「いい意味で」やばい。「いい意味で」話がつまらない。「いい意味で」面倒くさいやつだな。「いい意味で」音痴だね。「いい意味で」服がダサい。とか何言っても大丈夫なんじゃないかなっていうことに気づいて。
言われた方としては「おお、いい意味ならまあいいか」って納得してしまう妙な力があるんですね、「いい意味で」っていう言葉は。ふと冷静になってみたら全然そんなこと無いんですけど。ダサいぐらいならまだ、まだなんとかうやむやな空気のままなりそうですけど、「いい意味で」体臭がきつい。とかまでいくと流石に相手も怒るかなって思いますけど、怒ったとしても、「いい意味で」だよって念押しされたら、やっぱり「おお、いい意味ならまあいいか」って、なるような気がしますね。便利な言葉を見つけちゃったなあって。積極的に使っていきたいと思います。皆さんが使ってぶん殴られても責任取れませんけども。
で、ですね、「いい意味で」が似合う曲って何があったっけと思って、いろんな形容詞当てはめて見るんですけど、これが結構難しいんですね。言ってもミュージシャンの皆さんプロなんで。「いい意味で」音痴な人いないんですよね。可愛らしさで売ってるアイドルぐらいかなあって。でもそこはなんていうか「いい意味で」感が薄いっていうか、「普通に」音痴じゃ「いい意味で」さが出なくて、それじゃダメなんですよ。考えれば考えるほどですね、「いい意味で」と「普通に」の境界線を見極めるのが難しくて、これはこれで別の問題だなあって。
あれこれ悩んでて、ふと思い出したのが、今日の1曲のSir Mix-a-Lotっていうラッパーですね。今日の曲が収録されてる、この人のアルバムが、どの曲も「いい意味で」音に厚みがない。けなしてるわけじゃないですよ、あくまでに「いい意味で」ですからね。
実際聴けばわかりますけど「いい意味で」音がペラペラ。やっぱりこの時代のヒップホップたるものですね、このぐらいのスカスカした音じゃないと駄目なんですよ。右ストレートみたいなバスドラムとか腹の底に響くようなベースラインも、もちろんヒップホップなんですけど、「いい意味で」音が安っぽいヒップホップも時代の生き証人ですから。そして「いい意味で」ベタな展開と「いい意味で」無法地帯なネタ選び。今の人にはもう作れないヒップホップです。