メルカリで時計を買った話
メルカリで腕時計を買った。CAMYというスイスの今はなきブランドの腕時計だ。このブランドのことは今まで知らなかったが、調べてみれば興味深い来歴を経た企業であったらしい。
届いた時計はピカピカでまるで何十年も前の製品とは思えない。それが良いことなのか悪いことなのかは分からなかった。後から交換したと思われる合皮のベルトは安っぽくてがっかりしたが、しかし文字盤のデザインは好みであったし、トータルで見ればいい買い物をしたと小さくガッツポーズをした。ただし、裏蓋が天地逆に嵌められていることに何か嫌な予感はした。
その予感は当たっていた。
いざ使ってみると、まるで時間が合わない。日差数十秒なんてレベルではない、数分でもない。分差数十秒ぐらいは平気で遅れる。それどころか気付けば止まっている。手巻きの竜頭はいつまでも回せ続ける。なんだこれは。もはや”時”を”計”る道具(即ち此れ時計也)としてのアイデンティティを放棄した、腕輪のような何かである。
美しく撮られた商品写真が意図するまやかしに見事にしてやられたわけだ。ファック!
おそらく販売者は、時計をレストアするのが趣味で、小遣い稼ぎに販売もしてるんだろう。そういう素人がいるだろうなとは思っていたが、こんなにもレストアの技術的レベルが低いとは思わなかった。技術者としてもうちょっとプライドを持てよ。
メルカリで腕時計は二度と買わないと心に誓った、ある冬の日の出来事だった。